今日は、懐かしい手塚治虫の漫画です。
またまたNHKです。
「アナザーストーリーズ 手塚治虫 ブラック・ジャックからの伝言」という番組が
私のアンテナに引っかかって・・・
「アナザストーリーズ」は好きな番組、取り上げられていたのが、手塚治虫、
伝言ねー
懐かしさだけでなく、
私も、「ブラック・ジャック」から何かを受け取っていたような・・・
そう、漠然とした想いで、熱心にこの番組を観ました。
視点その1は、
「崖っぷちからの復活」で漫画の編集者の視点でした。
✳︎崖っぷちがあったんだ!小学生の私の中では「アトム全盛」しか思い浮かばなかったので・・
あー、そういえば、「虫プロ」倒産という言葉を思い出しました。
あの頃が「崖っぷち」だったのかな?
視点に話を戻して・・・
手塚作品が隆盛を誇っていた時代から
劇画が注目される時代になり、
それまでのように、手塚作品が売れなくなっていたし、
アニメ制作の「虫プロ」の倒産という追い詰められた状況もありました。
編集長も担当者も、「手塚の死に水をとる」ために、
4・5回の連載を書かせて、打ち切り・・・の段取りをしていたようです。
なんとも、残酷なようで、優しいようで、複雑な想いの状況だったようです。
手塚にとっても、本当に崖っぷちの中、全身全霊で臨んだ作品が「ブラック・ジャック」だったわけです。
しかし、
ある出来事により、
アンケートなどで拾えない、コアなファンがいることがわかり、
連載が続きました。
そして、児童漫画でありながら、大人のダークヒーローで、異例の大ヒットになったそうです。
視点その2
医療と真正面から向き合ったという視点で、3人の医師が登場して、彼らへの影響を語っていました。
一人目は鎌田實医師
学生運動を経て、現在、地域医療に取り組む鎌田医師は
神の手というすごい医療技術を振り翳して、
患者さんを救うだけではダメ、
患者さんと寄り添うことや
何ができるかを問い続ける姿勢の医療を模索するきっかけになったと言います。
二人目は、再生医学分野の谷口英樹教授です。
iPS細胞でミニ肝臓を作るコンセプトは
「ブラック・ジャック」にあったかもしれないと述べています。
それは「ときには真珠のように」という作品の中で、
ブラックジャックを手術した恩師が、その手術の時に手術で使用したメスをその体内に残すというミスが描かれていました。
7年後、肝臓の下から取り出したのは石灰化した石の棒だったのです。
つまり、メスはブラックジャックの体内で変化していたわけです。
谷口教授は、「ひとつは、医者もミスを犯す存在」と、した上で、
「恩師が犯したミスを患者さんがカバーした。という話が好きです。
医師が患者さんを治療しているばかりでなく、
患者さんが医師を助けている部分もあって、
iPS細胞でミニ肝臓作り、
<臓器の芽>を移植して、患者さん自身で、臓器を育ててもらい、病気を治していくというものを研究しているから」と
述べておられました。
3人目の医師は心臓血管外科医、渡邊剛(ゴウ)医師です。
作品では時間との闘いも描かれている。
一つ目は
渡邊医師はロボットアームにより短時間での手術を目指していること
二つ目は
漫画の中でも度々出てくる「医者は何のためにいるのか」という問いを自身の中でもいつも問おている
ということでした。
視点その3
映画監督大林宣彦です。
実写版で「ブラック・ジャック」を手がけた映画監督です。
時代の中でのつながりもあると述べていました。
医学を志しながら、漫画の道に進んだ手塚、
医師の家に生まれながらも映画に進んだ大林というだけでなく、
戦争の中を生きた経験が共通しているというのです。
手塚が
戦争を描いた他の作品で、
空襲で家族を心配している女性を慰めいると
非国民と言って殴られ、描いていた漫画は破られます。
悲惨な友人の傷跡を見れば「暴力は嫌」と思いながら、
敵兵を殺そうとする自分
そんな様子を描いています。
大林は言います。
正義とは戦争に勝った国の正義が正しく、負けた国の正義は間違っていることになる。
だから、僕たち戦争世代の、特に敗戦少年は正義なんて信じやしない。
何を信じるかというと、
「戦争という狂気に対する人間の正気なんです。」
「自分に都合のいい正義で、生きていたんじゃ加害者にしかならない。」
と、述べた上で、「ブラックジャック」を読んで、戦争を経験した少年の目が「帰ってきた」と思ったそうです。
大林は手塚が言っていたことを追加して・・・
「僕のヒーローはみんな半分大人で、半分子ども。
半分大人の時は戦争の尻尾を引っ張っていて、
半分子どもの時は、未来の平和を手繰り寄せる人間。
その二人が戦争と平和、いつも善と悪としてゴチャゴチャになっているのが僕の漫画なんです」と。
亡くなる3ヶ月前の肉声でも
「僕の漫画は命に関係している。
命を大切にすることが僕の一生の仕事のテーマ。
最高のショック、戦争の記憶が数十年経っても消えない。」とこどもたちへの講演で述べていました。
4代目の編集者が言います。
ブラックジャックを手塚は愛していた。と
また、ブラックジャックは手塚自身だったと。
そしてブラック・ジャックの初代の編集者は
「死に水を取る」つもりの担当だったが・・・
連載後の単行本の売れ行きが
瞬く間に1巻あたり100万部が売れたことを
「新しい読者つかないと100万という数字は出ない。こんな漫画はない」と絶賛して・・・番組は終わりました。
3つの視点をまとめてみると
手塚治虫は
「不条理なことがいっぱいあるけれど、また人間の心にもいっぱい矛盾を抱得ているけれど、人間には何が必要か、何を大切にして生きるのかという問いと向き合いなさい」という伝言だったと私は思います。
私にとって、手塚治虫といえば、最初に述べた「鉄腕アトム」です。
シールを集めるために、明治のマーブルチョコレートを買いまくって、下敷きはシールでいっぱいでした。
兄たちが持っていた「火の鳥」も読みました。
神話時代から未来に渡る壮大な物語。
手塚が未来の中で描いていたことがいくつも現実になっていることに触れるたびに、「手塚治虫ってすごいなー」と独り言を言っていました。
アトムのように「勧善懲悪」だけでなく、
不条理も描かれていて、
子どもながらに、世の中は、うまくいかないこともあるんだ、ということを「火の鳥」から学びました。
「ブラック・ジャック」は
学生時代、実習で地方に出かけた時に、尊敬する精神科医のご自宅を訪れたのですが、その本棚に、「ブラック・ジャック」の単行本がずらりと並んでいました。
ビックリしましたが、その影響で、私も読みました。
それまで、ドラマなどで扱われていたお医者さんは、いわゆる「良いお医者さん」だったので、
高額な治療代を請求するダークヒーローには、おったまげましたが、
なんか憎めず、時に拍手したり、小気味良さを感じたり・・・
そして白、黒でない灰色や、いろいろ混ざった茶色だったり、の世界を見た気がしました。
こうして、こんな番組のおかげで
私ももう一度「ブラック・ジャック」を読み直してみたくなりました。